番外話




朝が来る。
目を開けると、黄金色に輝いた太陽が顔を覗かせていた。
―あぁ、もう朝か。
もそもそと布団から出ると、まだしっかりと覚醒しきっていない頭を起こすように左右に首を振る。
ちらっと視界に時計が映る。
どうやらもう昼のようだ。

下に降りれば、既に朝食をすませたトキがソファーで二度寝をしていた。
季節はもう春だと言っても朝はまだ肌寒かった。
自分が近づいても全く気付かないトキに毛布をかけて台所へ向かう。
パンを一枚、トースターに入れ、湯を沸かす。
コトコトと鳴り始めた頃にパンは焼けた。
冷えないうちにさっとバターを塗って木製のテーブルにつく。
―今日は、深夜に出るんだっけ?
昨日の夜、トキから告げられた依頼をたどっていた。
一通り思い出した時、キューっと湯が沸いた音が鳴った。
ガタン、と席を立つとコップを取り出して、コーヒーの粉を入れる。
いつもトキには避難される、砂糖も忘れずたっぷりと入れたら湯を注ぐ。
コーヒーの香ばしい香りが辺りに広がった。
―これが、いいんだよな。
そこで初めて気が付いた。
部屋が全体的にうす暗かった。
熱いコーヒーをちびちびと飲みながらカーテンとはいいがたい布切れを引いた。
ぱぁっと部屋はたちまち明るくなって、気持ちのよい太陽にまた会った。
すると向こうでトキが上体だけを起こしてこちらを見ていた。
    「おはよ」
  「違ぇよ。こんにちは、だろ?」
お互いにくすっと笑って、「昼だね」と呟く。
  「朝も昼もねぇだろ?この仕事」
にやっと笑うトキに
    「それもそうだね」
と笑い返す。
残りのコーヒーを飲み干して、椅子にかけてあったコートを羽織る。
  「どっか行くのか?」
行儀悪く机に足をかけながら聞いてきたトキに「ちょっとね」と答えた。
万が一の為、帽子を被り、腰にはサバイバルナイフと拳銃。
準備完了、と靴を履いて扉を開けようとしたとき、後ろから声がかかった。
  「ほら、これも忘れんなよ」
トキの手に握られていたのは、防寒の為のマフラー。
    「・・・ありがと」
それを受け取って首に巻く。ふわっと暖かかった。

扉を開いて「あっ」と何かを思い出した。
閉まる前にさっと割って入ると、笑顔で言った。

   「行って来ます!」

トキは驚いて一瞬目を丸くしたが、くしゃっとした笑みを浮かべ言った。

   「いってらっしゃい」


これが俺の日常で、平和だと感じる日常なんだと思う。



Peace and my daily life
平和と日常は常に隣り合っていれば皆は幸福で・・・・・・